マウスピース矯正ができない例|「装置による制限」と「医院ごとの対応範囲」について解説

マウスピース矯正ができない例|「装置による制限」と「医院ごとの対応範囲」について解説

「他院でマウスピース矯正は難しいと言われました」

「ワイヤー矯正しか選べないと説明されました」

矯正相談の場で、こうしたお話を伺うことは少なくありません。そして同じ歯並びについて、医院によって異なる説明を受けたという方もいらっしゃいます。

なぜ答えが分かれるのか。その理由まで説明されないまま、ご自身で調べ続けている方が多いように感じます。

マウスピース矯正ができない例として挙げられているものを見ていくと、実は性質の異なる3つの話が同じ並びに置かれています。装置の構造上どうしても難しいもの、治療計画の作り方によって判断が変わるもの、そしてお口の状態を整えれば進められるものです。この区別がつかないままでは、「自分はもう選べないのか」という不安だけが残ってしまいます。

このページでは、矯正治療を担当する野崎雄介副院長が、実際の診断で何を見て適応を判断しているかをお伝えします。副院長はインビザライン社公認講師として歯科医師向けの技術指導にも携わり、治療計画の立案から毎回の確認までを一貫して担当しています。他院で迷われている方のご相談も承っていますので、判断の材料としてお読みいただければと思います。

目次

マウスピース矯正ができないケースは3つに大別できます

マウスピース矯正ができないケースは3つに大別できます

インターネットで調べると、マウスピース矯正ができない例として6つから8つほどの項目が並んでいることが多いです。重度の不正咬合、骨格の問題、歯周病、インプラント、埋伏歯、自己管理の難しさ。どのページもおおむね同じ内容が並んでいます。

ただ、この並べ方には見落とされている点があります。「できない」という同じ言葉が、まったく違う意味で使われていることです。

永久に難しいものと、医院の設計次第で変わるもの、そして順番を整えれば進められるものが、区別されずに混在しています。そのため検索で見つけた項目に自分が当てはまっても、それだけで諦める判断にはなりません。まずはこの3つを見ていきます。

装置の構造上、マウスピース単独では難しいケース

ひとつ目は、マウスピースという装置そのものの性質に由来する層です。上下の顎の位置関係がずれている場合や、歯を極端に大きく動かす必要がある場合が当てはまります。

マウスピース矯正は、透明な装置で歯の表面を覆い、面で力をかけながら歯を動かしていく方法です。装置が歯をつかんで動かす仕組みであるため、力のかかる方向や大きさには一定の制約があります。

この層に該当する場合、検査の結果として別の装置を組み合わせたり、外科的な治療を含めた方針をご提案することがあります。マウスピースだけで無理に進めるのではなく、仕上がりから逆算して方法を選ぶ形になります。

医院の診断力と設計力によって判断が変わるケース

ふたつ目は、同じ歯並びでも医院によって答えが変わりうる層です。

マウスピース矯正では、治療を始める前に作る計画の精度と、治療の途中で想定と違う動きが出たときの対処が、結果を大きく左右します。どちらも装置の性能ではなく、担当する歯科医師が持っている引き出しの数によって変わる部分です。

「同じ歯並びなのに、なぜ説明が違ったのか」と感じた方が最も知りたいのは、おそらくこの層の話です。対応の幅は医院ごとに異なります。この違いがどこから生まれるのかを、後の章で具体的にお伝えします。

お口の状態を整えれば進められるケース

みっつ目は、時間の前後関係の問題です。虫歯や歯周病の治療が済んでいない、永久歯が生え揃っていない、といったものが該当します。

これらは「マウスピース矯正には向かない歯並び」として挙げられることもありますが、性質がまったく異なります。歯並びそのものではなく、始める順番の話だからです。

つまり「今はできない」のであって、「ずっとできない」わけではありません。治療の順番を組み立てれば、マウスピース矯正に進める場合があります。ここを混同しないことが、落ち着いて判断するうえで役に立ちます。

装置の構造上、マウスピース矯正が難しいとされる例

装置の構造上、マウスピース矯正が難しいとされる例

ここからは、ひとつ目を詳しく見ていきます。

マウスピース矯正ができない例として挙げられるもののうち、装置の性質に由来するものは大きく4つに分けられます。骨格のずれが大きい重度の不正咬合、歯を大きく動かす必要がある歯並び、マウスピースが苦手とする歯の動きが必要なケース、そして装置を口に入れること自体が難しいケースです。

このうち3つ目の「歯の動き」については、歯並びの名前ではなく動きの種類で難易度が決まるという、あまり知られていない部分があります。順番に解説します。

骨格のずれが大きい重度の不正咬合

歯が並んでいる位置ではなく、上下の顎の位置関係そのものにずれがある状態です。この場合、歯を動かす治療だけでは届かない範囲が出てきます。

矯正治療で動かせるのは、あくまで歯と、歯を支えている骨の一部です。顎の骨の大きさや位置そのものを変えることは、歯を動かす治療の範囲を超えています。

そのため当院では、レントゲンによるセファロ分析で骨格のバランスを評価したうえで判断しています。検査の結果、外科的な治療が適していると考えられる場合には、その領域を専門とする医師へご紹介する形をとっています。マウスピースで対応できる範囲を正確にお伝えすることが、納得して治療を選んでいただく前提になると考えています。

骨格性の出っ歯・受け口

前歯が前に出ているとき、歯だけが前方に傾いているのか、顎の位置そのものが前後にずれているのかで、治療方針が変わります。

見た目の印象は似ていても、中身は別のものです。前者であれば歯を動かす範囲で改善が見込める場合があり、後者は歯の移動だけでは限界が出てきます。「自分はどちらなのか」は、鏡を見ただけでは判断できません。レントゲンで骨格を確認して初めて分かる部分です。

受け口については、手術を伴わずに治療できるケースの考え方を別の記事でまとめています。

>>受け口を手術なしで治療できるケースについて詳しくはこちら

骨格性の開咬

開咬は、奥歯が噛み合っているのに前歯のあいだに隙間が残る状態です。

原因には大きく2つの方向があります。舌で前歯を押す癖や歯の傾きによるものと、顎の骨格に由来するものです。前者であればマウスピース矯正で改善が見込めるケースもあり、当院の症例実績のなかにも開咬の治療例があります。

一方で骨格に原因がある開咬では、歯を動かすだけでは前歯が閉じきらない場合があります。どちらに当てはまるかは、噛み合わせとレントゲンの両方を確認したうえでの判断になります。

歯を大きく動かす必要がある叢生・出っ歯

叢生(歯が重なり合っている状態)や出っ歯では、歯を動かす距離が長くなるほど難易度が上がります。ここで、多くの記事に書かれていない点をお伝えします。

一般的には「歯並びの乱れが大きいほど難しい」と説明されます。ただ実際の治療では、そう単純ではありません。

ガタガタが大きい場合、抜歯で作ったスペースの多くは重なりの解消に使われます。そのため前歯を後ろに下げる距離は短くて済み、難易度はむしろ下がります。口元の見た目もそれほど変わりません。

反対に、ガタガタは少ないけれど口元を下げたいというご希望の場合、作ったスペースのすべてを前歯の移動に使うことになります。移動距離が長くなり、難易度は上がります。

「乱れが大きいから無理だろう」と考えていた方が、実際の検査では難しくないと分かることもあります。逆のこともあります。ここは検査を受けていただかないとお答えできない部分です。

マウスピースが苦手とする歯の動きが必要なケース

歯並びの名前で適応を判断すると、実際の難易度とずれることがあります。同じ出っ歯でも、必要な歯の動きが違えば難しさは変わるからです。

マウスピース矯正には、比較的スムーズに進む動きと、計画どおりに進みにくい動きがあります。適応の判断で見ているのは、歯並びの分類よりも「どの動きが何本の歯に必要か」という中身の部分です。

代表的な3つの動きについて、それぞれ何が起きるのかを解説します。

奥歯を後ろに送る動き(遠心移動)

抜歯を避けてスペースを作りたいときに使う動きです。奥歯を後方に送り、その分だけ前歯を並べる余地を作ります。

このとき壁になるのが、顎の骨の中に埋まったままの親知らずです。埋伏している親知らずがあると、そこから先へ奥歯を送れなくなります。装置の性能ではなく、物理的にスペースがないという理由です。

親知らずを抜かない選択をされる患者様には、歯のあいだをわずかに削るIPRを組み合わせ、可能な範囲を探る方針をご提案しています。ただし前後のずれが大きい場合は、目標としていた位置まで届かないことがあります。その可能性を事前にお伝えしたうえで、選んでいただく形にしています。

>>親知らずを抜かずに矯正する場合の考え方について詳しくはこちら

前歯を歯ぐき側に沈める動き(圧下)

噛み合わせが深く、下の前歯がほとんど見えない状態を改善するときに必要な動きです。

この圧下は、マウスピース矯正のなかでも計画どおりに進みにくい動きとして知られています。計画した移動量の3分の1程度しか動かないとも言われており、一度の計画で完了することは少ないものです。

当院では、マウスピース自体に膨らみを持たせたバイトランプという構造を用い、下の前歯が当たるようにして沈みやすい状態を作っています。あわせて前歯を前方に傾斜させる動きを組み合わせ、必要に応じて計画を作り直しながら進めています。ひとつの動きに頼らない設計にすることで、対応できる範囲が広がります。

小さい歯・短い歯を動かす動き

前から2番目の歯は、もともと小さく背が低い方が少なくありません。この場合、マウスピースが歯をつかむ面積が小さく、力が十分に伝わらないことがあります。

装置と歯のあいだに隙間ができ、その歯だけ浮いてくる状態です。歯並び自体には問題がなくても、その1本が動かないために全体が進まないことがあります。

対処としては、歯の表面に付ける突起であるアタッチメントを大きめに設置し、つかむ力を高めます。それでも浮いてくる場合は、ゴムをかけて歯を引き寄せながら進めます。事前に動きにくいことが分かる歯については、その旨を治療開始前にお伝えしています。

>>歯が動きやすい方の特徴について詳しくはこちら

装置を口の中に入れること自体が難しいケース

歯並びとは別の理由として、嘔吐反射が強く、マウスピースを装着すること自体が負担になる方がいらっしゃいます。

自己管理の難しさとして括られがちですが、性質が違います。装着時間を意識する以前に、装置を入れられないという話だからです。

当院では、装置の奥側をわずかに短く調整しながら、少しずつ慣れていただく形で進めた例があります。短くしすぎると歯を動かす力が足りなくなるため、調整の幅はごく限られます。これまでに1名と、多くはないケースです。ご不安がある方は、相談の際にお伝えいただければ対応を一緒に考えます。

同じ歯並びでも医院によって矯正できるか判断が分かれるケース

同じ歯並びでも医院によって矯正できるか判断が分かれるケース

ここからは2つ目、医院によって答えが変わるケースです。

マウスピース矯正では、治療を始める前に作る計画と、途中で想定外の動きが出たときの対処が、対応できる範囲を決めています。どちらも装置の性能ではなく、担当する歯科医師が何を選べるかという話です。

具体的には、抜歯を伴う治療に対応しているか、奥歯が倒れたときに戻せるか、計画の作り方、そして経過を早く把握できる体制があるかという4つに分かれます。順に解説します。

抜歯を伴うマウスピース矯正に対応しているか

歯を抜いてスペースを作る必要があると判断された場合、方針は大きく2つに分かれます。マウスピースのまま進める方針と、ワイヤー矯正に切り替える方針です。

抜歯を伴うマウスピース矯正は、スペースを閉じる過程で歯が予想と違う動きをすることがあり、対応に経験を要します。そのため一般的には、抜歯が必要なケースではワイヤー矯正が選ばれることが多くなります。

当院では、抜歯する場合とそうでない場合の両方でシミュレーションを作成し、仕上がりを見比べたうえでご提案しています。累計750症例以上、年間250症例以上を担当してきた経験のなかには、抜歯を伴うケースをマウスピースだけで進めた例も含まれます。抜くか抜かないかを先に決めるのではなく、どちらの結果が良いかを見てから決められる状態を作っています。

治療途中で奥歯が倒れた際にリカバリーできるか

抜いたスペースを閉じていく過程で、後ろの奥歯が前方に傾いてくることがあります。抜歯を伴うケースでは、一定の割合で起こりうる現象です。

問題はこれが起きたときに、どう戻すかです。

ここで対処の方法を持っていない場合、最初からマウスピースを選ばないという判断になります。「倒れる可能性があるからワイヤーで」という説明の背景には、この事情があることが少なくありません。

当院の副院長も、この対応については経験のある歯科医師に教わりながら身につけたと話しています。引き出しがなければ対応できないという点は、正直にお伝えしておきたいところです。どのような方法で戻していくのかを、次に説明します。

ゴムかけと交換日数の調整によるリカバリー

まず行うのが、マウスピースの交換日数を延ばしながら、ゴムをかけて奥歯を起こしていく方法です。

このとき判断が必要なのは、どの位置にどの強さのゴムをかけるかという点です。倒れ方は患者様ごとに違うため、決まった正解がありません。過去に同じような動きを見たことがあるかどうかが、そのまま対応の速さに表れます。

あわせて当院では、マウスピースの交換日数を一律にしない方針をとっています。歯の動きを確認しながら日数を決め、動きが追いついていない部位があれば延ばします。無理に予定どおり交換を進めると、装置と歯が合わなくなり、計画の作り直しにつながることがあるためです。

部分的なワイヤーやアンカースクリューの併用

ゴムかけだけでは戻りきらない場合、部分的にワイヤーを使って奥歯を起こすことがあります。また、大きく歯を動かす必要があるときには、アンカースクリューを併用してより確実に動かす方法もあります。

マウスピースだけにこだわらず、必要な場面で他の装置を組み合わせるという考え方です。

一見すると矛盾して見えるかもしれません。ただ実際には、こうした選択肢を持っていることが、結果としてマウスピースでの完了につながります。途中で対応できなくなり全体をワイヤーに切り替える事態を、避けやすくなるためです。

治療計画の作り方で結果が変わる

治療を始める前に作るシミュレーションの段階で、結果の多くが決まります。

当院では、前歯を後ろに下げる計画のとき、奥歯をなるべく動かさない設定にしています。奥歯を動かす前提で組むと、力のかかり方によって傾いてしまうことがあるためです。動かさない歯として扱い、前歯を引くときの支えの役割を持たせます。

あわせて、傾きを抑えたい歯には内側の根元にアタッチメントを設置します。抜歯を伴うケースでは、通常より大きいサイズを選んでつかむ力を高めることもあります。取り外しの際にやや力が必要になりますが、その分だけ歯が傾きにくくなります。

こうした設計の細部は患者様から見えにくい部分ですが、対応できる範囲を広げているのはこの積み上げです。

>>矯正担当医の実績について詳しくはこちら

治療中の変化に早く気づける体制があるか

奥歯の傾きのような動きは、早い段階で気づけば調整が軽く済みます。反対に数か月気づかないまま進むと、戻すための期間が長くなります。

当院ではバーチャルケアという遠隔でのモニタリングを取り入れており、ご自宅から送っていただいた記録をもとに経過を確認しています。通院の間隔が空いても、装置の浮きや歯の動きの遅れに気づける状態を保てます。

通院回数を抑えられるという利点もあり、6週から12週に1回の通院が、バーチャルケアをご利用の場合は3か月から5か月に1回で進められることもあります。遠方からお越しの患者様や、転勤の可能性がある方にもご利用いただいています。

今すぐはマウスピース矯正ができないケースの例

今すぐはマウスピース矯正ができないケースの例

3つ目です。マウスピース矯正ができない例として挙げられているもののうち、実際には始める順番の問題であるものを見ていきます。

ここに当てはまる方は、歯並びそのものが理由で断られたわけではありません。先に済ませることがあるという話です。「自分はもう矯正できないのだろうか」と感じていた方にとっては、見通しが変わる部分かもしれません。

虫歯や歯周病の治療が済んでいない場合

歯を支えている骨や歯ぐきの状態が整っていない段階で歯を動かすことは避ける必要があります。そのため、先に治療を行ってから矯正に進む流れになります。

この順番自体は、どの医院でも同じ考え方です。違いが出るのは、その治療をどこで受けるかという点です。

矯正を専門とする医院では一般的な歯科診療を行っていないことも多く、別の歯科医院で治療を済ませてから戻る形になります。当院は矯正治療だけでなく、虫歯や歯周病の治療も行っている歯科医院です。矯正前の治療も、矯正中に虫歯が見つかった場合の対応も、院内で続けて進められます。

永久歯が生え揃っていない場合

成長の段階によって、適した装置や始める時期が変わります。永久歯が生え揃う前の段階では、大人と同じ方法をそのまま用いることはできません。

ただしこれは「できない」ではなく、「その時期に合った方法がある」という話です。お子様の場合は、成長期に合わせたインビザラインファーストという選択肢があります。

顎の成長を利用できる時期に始めることで、大人になってから抜歯が必要になるケースを避けられる場合もあります。時期の見極めについては、一度ご相談いただくのが確実です。

インプラントや被せ物が入っている場合

インプラントは顎の骨と結合しているため、矯正で動かすことができません。そのため複数本入っている場合は、設計上の制約になります。

ただ、本数と位置によって話は変わります。動かしたい歯の並びから離れた位置にある場合や、本数が限られている場合は、インプラントを支えとして活用しながら進められることもあります。

被せ物についても同様です。アタッチメントを接着しにくい材質であれば、接着方法を工夫したり、付ける位置を調整したりして対応を検討します。本数の多さだけで適応を判断することはできません。

マウスピース矯正のなかでも部分矯正では対応できない例

マウスピース矯正のなかでも部分矯正では対応できない例

「前歯の1本がねじれているだけだから、部分矯正で直せるのではないか」というご相談をいただくことがあります。費用と期間を抑えられる選択肢として、自然なお考えだと思います。

ただ、歯がねじれている状態は、見た目以上に根元から動かす必要があります。歯の根を回転させるには、その歯の前後に十分なスペースが必要です。前歯だけを動かす範囲では、そのスペースを用意できないことが多くなります。

また、奥歯の噛み合わせを確認せずに、歯を削ってスペースを作る方法で前歯だけを並べた場合、後戻りが起こりやすくなります。噛み合わせが歯を押し戻す力として働くためです。せっかく整えた前歯が、数年後に元へ近づいてしまうことがあります。

そのため当院では、奥歯の噛み合わせに乱れがある患者様には、全体を動かす方法をご提案しています。部分矯正で対応できるかどうかは、前歯の見た目ではなく、奥歯を含めた噛み合わせ全体を確認したうえでの判断になります。

他院でマウスピース矯正が難しいと言われた方が次に確認したいこと

他院でマウスピース矯正が難しいと言われた方が次に確認したいこと

すでに他院で相談され、難しいと説明を受けた方もいらっしゃると思います。その説明が誤っているという話ではありません。

ただ、どのような根拠でその判断に至ったのかが分かると、次の選択に納得して進めます。「本当にもう無理なのだろうか」という気持ちを抱えたまま探し続けるより、確認すべき点をはっきりさせた方が気持ちが楽になります。

確認しておきたい点を3つご紹介します。

精密検査とシミュレーションに基づく判断だったか

お口の中を見ただけの判断と、レントゲンや3Dスキャンのデータをもとにシミュレーションを作成したうえでの判断では、精度が変わります。

当院では初回の矯正相談で、iTeroという口腔内3Dスキャナーによる撮影を行います。この段階で、歯並びが動いていくシミュレーションを画面でご確認いただけます。ご自身の歯が並んでいく様子を見ていただくことで、判断の材料が増えます。

一方で、当日にお伝えできる範囲には限りがあります。横顔の変化についてはこの段階では出せません。また骨格の評価を含めた詳細な診断には、別途費用のかかる精密検査が必要です。当日わかることとそうでないことを、あらかじめお伝えしておきます。

抜歯・非抜歯の両方を検討した結果だったか

歯を抜く前提で立てた計画と、抜かずに済む可能性を探った計画では、結論が変わることがあります。

「抜歯が必要なのでマウスピースでは対応できません」という説明を受けた場合、抜かずに進める方法が検討されたのか、あるいは抜いたうえでマウスピースで進める方法が検討されたのかによって、意味が違ってきます。

当院では両方のシミュレーションを作成し、仕上がりを見比べたうえでご提案する形をとっています。どちらが適しているかは患者様ごとに異なり、検査をせずにお答えすることはできません。

別の医院に相談する際に持っていくとよいもの

他の医院で相談される場合、これまでに撮影したレントゲン写真やシミュレーションのデータをお持ちいただくと、話が早く進みます。同じ検査を繰り返す手間も省けます。

あわせて、どのような説明を受けたのかをメモしておいていただけると助かります。「骨格に問題があると言われた」「抜歯が必要だと言われた」という内容が分かれば、その判断の根拠を確認する形で話を進められます。

ご自身で説明を再現しにくい場合でも、気になっている点をそのままお話しいただければ問題ありません。

マウスピース矯正ができないとされるケースに、当院が対応した症例

ここまでお伝えしてきた内容が、実際の治療ではどう表れるのかをご紹介します。

いずれも、一般的にはマウスピース矯正が難しいとされる条件に当てはまるケースです。その条件がなぜ難しさにつながるのか、そしてどのような方法で進めたのかという順でご説明します。

なお詳しい治療内容と治療前後の状態は、症例実績のページでご確認いただけます。

>>当院の症例実績について詳しくはこちら

抜歯を伴う大きな移動が必要だった症例

矯正治療前
矯正治療後

上下の八重歯が気になるとお越しになった患者様です。歯を抜いてスペースを作る必要があり、上下左右から1本ずつ抜歯しました。

一般的に、抜歯を伴うケースはマウスピース矯正では対応が難しいとされます。理由は、抜いたスペースを閉じていく過程で、後ろの奥歯が前方に傾いてくることがあるためです。傾いたまま進めると噛み合わせが合わなくなり、途中で装置を変更せざるを得なくなります。

このケースでは、シミュレーションの段階で奥歯を動かさない設定にし、前歯を引くときの支えとして扱いました。あわせて奥歯の内側の根元にアタッチメントを大きめのサイズで設置し、傾きにくい状態を作っています。抜歯はマウスピースの装着に慣れていただいた1枚目から2枚目のあたりで行い、装置に不慣れな時期と抜歯後の期間が重ならないようにしました。

年齢・性別大学生女性
主訴八重歯、前歯のガタガタ、噛み合わせが気になる
施術内容歯全体のマウスピース矯正システム「インビザラインアドバンス」を用いた治療
治療期間3年
費用1,034,000円(税込)
リスク/副作用全ての方で、疼痛、咬合痛、歯根吸収、歯肉退縮、歯髄壊死が生じる可能性があります。
その他注意点指定した時間、マウスピースをつけていただけない場合は治療期間が長くなる場合があります。

>>当症例の他の写真や詳細に関してはこちら

治療途中で奥歯が倒れ、リカバリーが必要になった症例

矯正治療前
矯正治療後

先ほどお伝えした奥歯の傾きが、実際に起きたケースです。

抜いたスペースを閉じる途中で、後ろの奥歯が前方に傾いてきました。この段階で対応の方法を持っていない場合、全体をワイヤー矯正に切り替える判断になることが少なくありません。多くの歯科医院では、傾いた奥歯をマウスピース矯正で修正することができないからです。

このケースでは、まずマウスピースの交換日数を延ばし、歯の動きが追いつくのを待ちました。あわせて奥歯を起こす方向にゴムをかけ、傾きを戻していきました。ゴムをかける位置と強さは、倒れ方を見ながら決めています。

バーチャルケアで経過を確認していたため、傾きに早い段階で気づけた点も対応につながりました。現在は噛み合わせが整い、マウスピースのまま治療を続けています。予定どおりに進まない場面があっても、対処しながら進められる体制を整えています。

年齢・性別30代女性
主訴出っ歯
施術内容歯全体のマウスピース矯正システム「インビザラインアドバンス」を用いた治療
治療期間2年2ヶ月
費用1,034,000円(税込)
リスク/副作用全ての方で、疼痛、咬合痛、歯根吸収、歯肉退縮、歯髄壊死が生じる可能性があります。
その他注意点指定した時間、マウスピースをつけていただけない場合は治療期間が長くなる場合があります。

>>当症例の他の写真や詳細に関してはこちら

本来は抜歯が必要な状態でありながら、抜かずに進めた症例

歯のガタガタが強く、通常であれば抜歯を検討する状態だった患者様です。あわせて噛み合わせが深く、下の前歯がほとんど見えない状態でした。顎が小さく、舌の位置が下がっていたことで、歯が内側に傾いていたと考えられます。

このケースには難しさが重なっていました。ガタガタの程度からは歯を抜きたいところですが、上の歯を抜くと前歯がさらに内側に入り、噛み合わせがより深くなる方向に動いてしまいます。抜いても抜かなくても課題が残る状態でした。このような難しいケースは多くの歯科医院では、ワイヤー矯正が適応となるかと思います。

しかし患者様は、口の中に物が入ることや、長時間口を開けることが苦手で、歯科治療そのものに不安を感じており、ご自身での着脱ができないワイヤー矯正での治療にはより強い抵抗感がありました。

そこで当院ではマウスピース矯正で、抜歯は行わずに歯列を外側に広げる動きと、歯のあいだをわずかに削るIPRを組み合わせてスペースを作りました。深い噛み合わせについては、マウスピースに膨らみを持たせたバイトランプを用いて下の前歯を沈める動きを繰り返すことで、正しい位置に仕上げています。

抜歯という選択肢を外したうえで仕上げる方法を設計できるかどうかが、このケースの分かれ目でした。

年齢・性別20代女性
主訴前歯のガタガタと噛み合わせが気になる
施術内容歯全体のマウスピース矯正システム「インビザラインフル」を用いた治療
治療期間1年8ヶ月
費用924,000円(税込)
リスク/副作用全ての方で、疼痛、咬合痛、歯根吸収、歯肉退縮、歯髄壊死が生じる可能性があります。
その他注意点指定した時間、マウスピースをつけていただけない場合は治療期間が長くなる場合があります。

>>当症例の他の写真や詳細に関してはこちら

マウスピース矯正ができないケースに関するよくある質問

ここまでお伝えできなかった点について、矯正相談でよくいただく質問にお答えします。

虫歯があるとマウスピース矯正はできませんか

虫歯がある状態では、先に治療を済ませてから矯正に進む流れになります。歯を動かしているあいだは装置を外す時間が限られ、治療の機会を作りにくくなるためです。

当院は一般的な歯科診療も行っているため、矯正前の虫歯治療から続けて対応できます。矯正中に新たに見つかった場合も、院内で処置を行います。

食いしばりや歯ぎしりがあるとできませんか

強い力がかかることで装置が変形したり、破損したりする可能性はあります。ただ、それだけで適応外になるとは限りません。

装置の交換時期を調整したり、経過を確認する間隔を短くしたりして対応する方法があります。日中の食いしばりに心当たりのある方は、相談の際にお伝えいただければ計画に反映します。

食事のあとに歯磨きができないときはどうすればよいですか

外出先などで歯を磨けない場面では、水でしっかりうがいをしてから装置を戻す方法があります。携帯用の歯ブラシをお持ちいただく方もいらっしゃいます。

装着時間を確保することも大切ですので、磨けないからと長時間外したままにするより、うがいで対応して戻していただく方が治療は進みやすくなります。無理のない方法を一緒に考えます。

治療の途中でできないと判断されることはありますか

歯の動きが計画と異なった場合、シミュレーションを作り直したり、一部にゴムや別の装置を組み合わせたりしながら進めることが一般的です。途中で治療を中止する事態は限られます。

当院では遠隔でのモニタリングによって早い段階で変化に気づける体制を整えており、計画の修正も含めて対応しています。

まとめ:マウスピース矯正ができないと言われたら、当院へご相談ください

まとめ:マウスピース矯正ができないと言われたら、当院へご相談ください

マウスピース矯正ができない例として挙げられているものは、装置の構造上の限界、医院ごとの対応範囲の違い、そしてお口の状態を整えれば進められるものという3つに分かれます。検索で見つけた項目にご自身が当てはまっていても、それだけで結論が決まるわけではありません。

特に2つ目の層については、抜歯を伴う治療への対応、治療途中で歯が予想と違う動きをしたときの対処、そして計画の作り方によって、答えが変わることがあります。

当院では、インビザライン社公認講師である野崎雄介副院長が、治療計画の立案から毎回の確認までを一貫して担当しています。抜歯する場合とそうでない場合の両方でシミュレーションを作成し、仕上がりを見比べたうえでご提案する形をとっています。他院でマウスピース矯正は難しいと説明を受け、迷われている方のご相談も承っています。

初回の矯正相談では、口腔内3Dスキャナーによる撮影と歯並びのシミュレーションをご確認いただけます。ご自身の歯並びがどこまで動くのかを目で見てから、治療を進めるかどうかをお決めいただけます。

>>矯正相談の流れについて詳しくはこちら